ダイヤモンドはその希少性から、価値があるのもとして多くの人に認識されています。美しいことはもちろん、その高い資産価値(あると思い込まされている?)から根強い人気があります。ただ、ここ最近になりこのダイヤモンドの価値が根底から揺らいでしまうような状況となってきているようです。
それはなぜかというと合成ダイヤモンドの技術の向上にあります。ここ数年で炭素チップから無色透明で宝飾に適したダイヤモンドを作る技術がイッキに向上。その精度は宝飾鑑定士でも違いがほとんど分からないくらいまでに精度が高くなっています。その精度はこれまでのチャチな人工ダイヤモンドの比ではないということです。
加工されたものは人間の目で判別することはほぼ不可能。1億円近い特殊な装置を使ってやっと判別しなければいけないほどになっています。それも「窒素」を含んでいるかいないかくらいの違いで判断するようです。天然ものは地中に埋まっている間にどうしても窒素を取り込んでしまうのだとか。合成にはそれがありません。逆をいえば、もはや違いはそれくらいしかないということになります。
さらにこの合成ダイヤモンドを積極的に取り扱うのがダイヤモンド産出最大手のデビアスグループだというのが驚きです。
同社は人工ダイヤについて「当社の研究所で全く同じものを大量生産できる」と説明している。デビアスの製造するダイヤは「キュービックジルコニア」などの模造ダイヤとは異なり、天然ダイヤと同じ物理特性と化学組成を持つ。同社の製造技術はかなり進歩しており、人工品と天然品を区別するには専門家が識別機器を使用しなければならないほどだ。
人工ダイヤの価格は1カラット=800ドル(約9万円)。天然ダイヤの10分の1程度の価格で、若い世代向けに販売を強化したい狙いがあるようです。
ちなみに「ダイヤモンドは永遠の輝き」や「婚約指輪は給料3か月分」などはダイヤモンドを販売促進するためにデビアスが考えたキャッチコピーになります。ここまで世間一般に浸透させていることを考えてると恐ろしくもありますね。
日本でも老舗の宝飾店が合成ダイヤ専門店をオープン
このような人工ダイヤモンドは徐々にではありますが日本でも浸透しつつあるようです。京都にある老舗の宝飾店 IMAYO(今与)では、日本初となる合成ダイヤモンド(ラボ・グロウンダイヤモンド)専門店でジューエリーブランド「SHINCA」の販売をしています。
(出典:SHINCA)
ラボ・グロウン ダイヤモンドは、天然ダイヤモンドとは生み出される環境が違うだけで、完全に同じ成分・特徴を持っており、キュービックジルコニアなどの模造石・類似石とはまったく異なります。最先端の研究・製造拠点であるラボでの生成方法は、CVD(化学気相蒸着法)とHPHT(高温高圧法)の2種類。完全にコントロールされた環境下で結晶化し、高い透明度を誇るダイヤモンドとなります。つまり地上において、本物の輝きの再現が可能になったのです。
合成ダイヤモンドといっても、化学的にも物質的にも天然ダイヤと同じで、天然ダイヤと比べても全く遜色がないようです。こちらの合成ダイヤモンドはさすがに10分の1の価格とはなりませんが、天然ものに比べると7割り程度の価格で購入できるようになっています。
合成ダイヤモンドのメリットは価格の安さだけではなく、環境面でも優しいということ。天然ダイヤモンドは地中から採掘する必要があるため、環境破壊が懸念されるケースもあります。合成ダイヤであればその製造過程は地球環境に優しく、安定して供給できるのも魅力の1つとなっています。
合成ダイヤモンドの普及で新たな問題も発生
合成ダイヤモンドの普及に伴い、新たな問題も発生してきています。それは合成ダイヤモンドと天然ダイヤモンドの区別がつかず、質屋やブランド買取ショップなどで誤って買い取りを行ってしまうケースが増えてきているとのことです。
専門家であっても、これまでの合成ダイヤモンドと同じようなやり方で見分けるは非常に困難になってきているようで、ダイヤの構造石を見分けることができる「ダイヤモンドテスター」を使っても「ダイヤモンド」と判定されてしまうレベルになっています。それほど精巧にできているってことなんでしょうね。
これを悪用して、合成ダイヤモンドを天然ダイヤモンドと偽って売却をする人が増えたとしても決して不思議ではありません。また、このような事例が増えてくると、値段を付けることに不安を感じる業者がダイヤモンドの買い取りに消極的になっていくことも懸念されます。
まとめ
いやー、技術の進歩ってすごいですね。天然ものと遜色がない人工ダイヤモンドが量産できる時代になったということです。天然ものと人工ものでうまく2極化できればよいですが、下手をすると天然ものが人工ものに引っ張られる形で価値が下落していくことも十分に考えられるでしょう。
真珠の価値が、養殖真珠の誕生によって大きく下落してしまったことを考えると、ダイヤモンドが同じような経緯を辿ったとしても決して不思議ではありません。むしろ、トレースしていくものと考えるのが自然ではないでしょうか。
単純に宝飾品として求めるのであれば人工ダイヤモンドは歓迎すべきものになりそうですが、「資産価値の保存」という面ではあまり歓迎されない可能性があることは覚えておいたほうがよいかもしれません。
資産価値だけで考えれば、やっぱり王者は「金」ということになりそうですね。
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